ファン獲得のコツは、作品の“世界観”を伝えること。マンガアプリ「GANMA!」が見つけた、効果的な動画広告とは

好きなマンガを、いつでもどこでも気軽に読める。指先ひとつで、簡単にページをめくれる。スマートフォン上で読むことができるマンガアプリは、紙では考えられないほどの手軽さが魅力のサービスだ。

2017年に発表されたマンガアプリの利用状況調査によると、計6サービスのマンガアプリ※の利用者数がそれぞれ100万人を超えていることからも、その人気のほどが伺える。
※LINEマンガ、comico、マンガワン、マンガボックス、少年ジャンプ+、GANMA!

なかでも、コミックスマート株式会社が提供する「GANMA!」は、“103作品ものオリジナルマンガを無料で制限なく読み放題“という、マンガ好きにとって夢のようなサービスだ。

その魅力を多くの若者に伝えるため、同社は約2年前から、動画広告配信に精力的に取り組んできたという。“静止画”であるマンガの良さを、どうやって“動画”広告で表現してきたのだろうか。

今回はプロダクト企画と広告宣伝を務める福西祐樹氏に、試行錯誤の結果見えてきた、動画広告制作の方法論について聞いた。

無料で読み放題の「GANMA!」。配信している全120作品中、なんと103作品がオリジナルコンテンツ(※2017年7月末現在)


――GANMA!ではオリジナルコンテンツを103作品も掲載しているとのことですが、それほどの数のマンガをどうやって制作しているのでしょうか?
福西: 弊社ではGANMA!の運営の他に「RouteM」というマンガ家支援プログラムも手がけています。「RouteM」はマンガ家のスカウトから育成、制作支援金の提供や専属編集担当の配属まで携わることで、マンガ家が創作活動に専念できる環境をつくり上げているんです。
そうすることで、GANMA!オリジナルのコンテンツを生み出し、たくさんのマンガをユーザーにお届けすることができる体制を整えています。

――GANMA!では、主にどのようなジャンルのコンテンツを配信していますか?

福西:GANMA!のコンテンツは、あえて特定のジャンルに絞らないことにしています。

雑誌の場合はページ数の制約があるのに対して、Webの場合はページ数という物理的な制約がありません。

だからこそ、100を超えるマンガを配信することができていますので、ジャンルを絞ることなくユーザーがさまざまなマンガに出会えるようにしています。

――利用するユーザーは、どれくらいの年齢層の方が多いのでしょうか?

福西:10~20代の若者が中心ですね。彼らはスマートフォンに触れる機会が多い一方で、雑誌のマンガにほとんど触れてこなかった、という声も届いています。そのような、まだマンガの面白さを知らない若者たちに、マンガの魅力を少しでも知ってほしい、と思っていますね。

サービス内容だけでなく「作品の世界観」まで伝えることが、ユーザーの獲得に不可欠

▲GANMA!のトップページから、自分の好きなマンガを見つけるのも楽しい

――自社デザイナーが動画広告を作成するなど、精力的に動画広告に携わっているとお伺いしました。コミックスマートではいつ頃から動画広告に注力しているのでしょうか。

福西:スマートフォン上に動画広告が掲載できるようになった当初からやっています。他の企業が動画広告に手をつける前だったので、先行者メリットとして広告にも差別化をはかれるのでは、と思って取り入れました。

――だいぶ早い時期から動画広告に着手していたのですね!動画広告の配信を始めたころは、どのようなクリエイティブを制作していたのでしょうか?

福西:当初は、マンガのコマを並べ、ユーザーが読む視点に合わせてカメラを動かすような動画広告を中心に作っていました。

しかし、それでは他業種含むほかサービスの動きのある動画広告と比べてややチープに見えてしまう上に、ユーザーに「セリフを読んでもらうこと」が前提になってしまっていて、スマートフォンの小さな画面で観るのに適しているとは言えませんでした。

そこから「Webに最適化されたマンガアプリの動画広告とは何か」という点を考えながらさまざまなクリエイティブを試した結果、ユーザーに「マンガの世界観」をしっかり伝えることが、動画広告のクリエイティブにおいては重要ではないかと考えるようになりました。

――どのようにして「世界観」を伝えているのですか?

福西:キャラクターや吹き出しに動きを加えたり、マンガのストーリーやキャラクターの特徴を伝える工夫を施したりしています。


▲「創造のリンゴ」という作品の動画広告。アニメーションと共に、マンガのキャラクターの吹き出しやストーリーについてのコメントが入っている。

以前制作していた動画広告よりも、動きのある動画になったことで、ユーザーの興味を惹くことが可能になり、再生率や視聴完了率などの数値も高くなりました。

また、サービスの内容を紹介しただけの短尺動画よりも、掲載しているマンガがどのようなストーリーなのか紹介している中尺動画のほうが、アプリの継続率が10%ほど向上したというデータもあります。

ユーザーにアプリをダウンロードしてもらい、マンガを読んでもらうためには、無料マンガアプリといったサービスの内容を知ってもらうだけでは不十分です。どんなマンガが読めるのか伝えることで「そのマンガを読むためにアプリをダウンロードしよう」と思ってもらえることが重要ではないかと考えています。

「配信メディアはどこか?」を踏まえて、動画広告クリエイティブを作り分ける


▲「ガンマで、マンガを、ガマンしない」のキャッチフレーズに違わず、毎日多くの作品が更新される。

――動画広告によって「マンガの世界観」を伝えるため、他にも工夫していることはありますか?

福西:広告の配信先の特徴に応じて、クリエイティブにも違いを出すようにしていますね。
例えばYouTubeやAbemaTVといった「動画配信サービス」の場合と、TwitterやFacebookなどの「SNS」の場合で、ユーザーの視聴態度が異なります。

動画配信サービスを利用している場合、ユーザーは動画を視聴するために音声をオンにして動画を観ているケースが多いでしょう。サウンドレートが高く、音に対して敏感な状態にあります。

そのため、伝えたい情報を「音声を含む動画の構成要素すべてに盛り込む」ことにより、GANMA!の魅力が伝わるようにしています。


▲実際にAbemaTVで配信されたWebCM。音楽や音声と共に、さまざまな作品とタイトルが登場する

次に、SNSに動画広告を配信する場合です。スキマ時間に他のユーザーの投稿などをチェックすることが中心で、動画コンテンツを観に来ているわけではありません。先ほどのケースと比べれば当然サウンドレートは低くなります。

そのため、SNS上に配信する場合は「動画には音なしでもわかるように字幕などを加えつつ、本文テキストとして入稿する広告素材と必ずセットで考える」ようにしているのです。

このように、広告の配信先によってユーザーの視聴環境は全く異なります。静止画クリエイティブと動画クリエイティブのどちらが良いのか、という判断はもちろんのこと、その配信先メディアを利用しているユーザーにとって最適化されたクリエイティブが出来ているのかどうかも、きちんと視野に入れて制作を行っています。

制作費や制作時間といったコストがかかる動画広告。それでもマンガの世界観を伝えるために活用していきたい


――静止画であるマンガの面白さを、動画で伝えることは難しいことのように感じます。

福西:そうですね。マンガという静止画の元素材を生かしつつも、世界観を崩さずに動画広告を制作するのは非常に難しいです。静止画をアニメーションにする場合は、新しく絵を加えなければ動きを出せませんから、その分時間もかかります。

しかしながらGANMA!は連載型のマンガ配信サービスですので、ユーザーがダウンロードして作品のファンになれば、継続してサービスを使い続けてもらえます。そのため、短期的なダウンロード数にだけ拘らず、中長期で使ってもらえるユーザーを集めるために、時間をかけてでもマンガの魅力を最大限に伝えることのできる動画クリエイティブを追い求め、動画広告を配信する意味はあると思っています。

――なるほど!ユーザーが継続的に利用してくれるからこそ、その効果は大きくなるわけですね。最後の質問になりますが、今後GANMA!の魅力を伝えるために、動画広告をどのように活用していきたいと考えていますか?

福西: 現在スマートフォン上で楽しむコンテンツは数多くありますし、特にこれから動画のコンテンツはますます増えていきます。

私たちのように動画を広告として活用する企業もあれば、動画コンテンツそのものをビジネスにしている企業もたくさんあります。いろんな企業が動画に着手していくなか、スマートフォン上に広告を含む動画コンテンツが膨大に増えていくことは待ったなし、そんな中で私たちの動画広告クリエイティブも進化していかなければ、ユーザーにはどんどん届かなくなってしまいます。

そのためには、今後もさまざまなクリエイティブや配信方法を試しながら、最先端を行く動画マーケティングを行っていく必要があるでしょう。

弊社では事業を設立した2013年から、「オリジナルのマンガコンテンツを無料配信」という前例に捉われないビジネスに取り組んできました。

市場が流動的なWeb業界で今後も価値を生み出していくために、ビジネスだけでなくプロモーションにおいても、常に前をいく挑戦をしていきたいと考えています。