効果的な動画広告のカギは「クリエイティブと配信面とのベストマッチ」にあり――モバイルファースト:動画広告の最適解(後編)

6月16日、都内で開催された「モバイルファースト:動画広告の最適解 -スマホ時代の新フォーマットと クリエイティブベストプラクティス-」。
Facebook Japan株式会社でリージョナル・プロダクトマーケティングマネージャーを務める小黒 弘之氏と、株式会社サイバーエージェントでアドテク本部 LODEOカンパニー責任者を務める加藤 徹氏の2名が登壇した。

「モバイルファースト」とは、テレビや映画に配信する動画広告を、そのままスマートフォンに転用するのではなく、「モバイルに適応させたクリエイティブ制作」を行う考え方を指す。近年のWeb開発領域において注目を浴びている一方で、具体的にどのような制作を行えばよいのか悩む企業も多いだろう。

今回は後編として、サイバーエージェントのアドテクノロジー分野におけるサービスの開発強化をはかる専門部署「アドテク本部」にて、動画広告ネットワーク「LODEO」の責任者を務める加藤 徹氏の講演レポートをお送りする。

「ヨコ型」が主流である現在の動画広告において、「タテ型」というフォーマットに挑戦する「LODEO」の新たな取り組みは、なぜ生まれたのだろうか。

110媒体以上に配信可能。「LODEO」が挑戦するアウトストリーム広告戦略とは

加藤:株式会社サイバーエージェント アドテク本部 LODEOカンパニー責任者を務めております、加藤と申します。本日は弊社が展開するサービス「LODEO」のご紹介と、実際に動画広告を配信するなかで見えてきたポイントや広告効果調査の結果についてご説明いたします。


「LODEO」はスマートフォン動画に特化したアドネットワークサービスです。

動画広告の配信方法には「インストリーム型」と「ソーシャルインフィード型」、そして「LODEO」が実施している「アウトストリーム型」という3つの配信方法があります。
「インストリーム型」はYoutube、やGYAO!などで配信される動画コンテンツの最初や途中、最後に挿入される動画広告の総称です。
「ソーシャルインフィード型」はFacebookやTwitter、LINEなどSNSのフィード上に表示される動画広告、と弊社では定義付けています。
そして「LODEO」の配信方法である「アウトストリーム型」は、さまざまなウェブメディア上の広告枠に配信される動画広告を指します。

動画広告市場は主に「インストリーム型」と「ソーシャルインフィード型」が主軸です。では、なぜLODEOでは敢えて「アウトストリーム型」を選んでいるのか。

それは「アウトストリーム型」であれば、さまざまなメディアから多くユーザーに配信できるため、ほかの配信方法よりも膨大なリーチを有効活用できるからです。「インストリーム型」や「ソーシャルインフィード型」は、出稿したいと考えている企業が非常に多くいます。一方で、その在庫は限られているもの。つまり今後広告を出稿したいと考えている企業のあいだで、ますます競争が激化していくでしょう。

だからこそ、膨大なリーチをもつ「アウトストリーム型」が今後の動画広告において重要な配信方法になるのだと考えています。

また「LODEO」では、ニュース系やエンタメ、グルメ、スポーツやファッションなど110媒体以上の幅広いジャンルのサイトに動画広告を配信できるため、3000万UB※に対してリーチを届けることが可能です。
また動画広告の配信先である提携メディアを選出する際には、「信頼性の高い媒体運用をしているか」という点を重視しています。

※UB(ユニークブラウザ)・・・Webサイトを閲覧するブラウザ(Chrome、Internet Explorerなど)ごとに、ユーザーの訪問数をカウントすること

スマートフォンの視聴環境に適応させた「タテ型動画」というフォーマット

次に「LODEO」がなぜタテ型動画広告に取り組んでいるのかについて、お話しいたします。

これまでモバイルに配信されてきた動画広告は、テレビ視聴を前提として制作された「ヨコ型動画」をそのまま転用するケースが主流でした。

しかし、テレビとスマートフォンには「画面の大きさ」という違いがあります。
スマートフォンはテレビよりも画面が小さい上に「ヨコ型動画」だと画面上の1/3ほどしか表示されません。スマートフォンはテレビよりも近い距離で視聴するとはいえ、縮小された商品パッケージやブランドロゴではどうしても見えにくくなってしまいます。


また、テレビとスマートフォンにおけるもう一つの違いとして「視聴環境」があげられます。例えばテレビはリビングなどでソファに座りながら、広い視野でゆったりと視聴する一方で、スマートフォンは手元にある画面を集中して、狭い視野で視聴するデバイスです。

電車内のディスプレイ広告や駅のデジタルサイネージなどを見てもわかるように、広告を制作・掲載する際には掲載媒体の特徴に合わせてそのクリエイティブを最適化させる必要があります。

つまりスマートフォンも同様に、「画面の大きさ」や「視聴環境」が異なる場合、同じ動画をそのまま転用するだけでは期待した訴求効果が得られないのです。

だからこそ、スマートフォンの視聴環境に最も適した動画フォーマットを開発していこう、というのが「LODEO」が挑戦する取り組みになります。

動画広告フォーマットを考える際に、注意すべき2つのポイント

モバイルに適応する動画広告フォーマットを考える際は、「ユーザビリティ」と「訴求インパクト」という2つのポイントについて注意する必要があります。


「ユーザビリティ」は邪魔せず、自然であること。また「広告をスキップ」といった、行動の選択肢がユーザーに与えられていることを指します。これはユーザーにとって「広告は邪魔なものだ」という印象を与えないために重要なポイントです。

次に「訴求インパクト」。これは広告としてユーザーにしっかりと視認されること、また「良い驚き」があることでユーザーの興味を引き、印象に残る広告として覚えてもらえることを指します。企業にとっては、広告の効果を最大限に出せることは大変重要なので、「ユーザビリティ」と同じくらい大切なポイントとなります。

この相反する2つのポイントを両方満たす広告フォーマットを提供するため、「LODEO」では3つのタテ型アドフォーマットを開発しています。
画面いっぱいに1つのタテ型動画が表示される「タテフル」と、ヨコ型動画と上下パネルが表示される「ダブルパネル」、ヨコ型動画とフリック型マルチパネルが表示される「フリックパネル」です。どれもスマートフォンの画面の90%以上の占有面積に表示されるものになっています。

画面いっぱいに表示することで「訴求インパクト」を取り入れつつ、画面上にコンテンツを少しだけ残すことによって、ユーザーの邪魔をしないための工夫が施されています。

「タテ型動画」に効果はあるのか。3つの調査から見えた有効性

LODEOでは昨年の秋頃からタテ型動画広告に取り組んできましたが、そのなかで実際の広告効果について調べるため、3つの調査を行いました。

一つ目は「全体ブランドリフト調査※」。タテ型動画に接触したユーザーと、非接触のユーザーのあいだに、広告や商品に対する印象に変化は見られるのか調査しました。

※ブランドリフト調査・・・広告に接触したユーザーと非接触のユーザーを比較して、広告がブランディングにどのような効果をもたらしたのか調査すること。ブランドに対して印象が良くなる、企業の認知度が向上する、といった指標を利用する。

その結果「ブランド認知」「好意度」「購入意向」「広告認知」「広告の印象」(広告が印象に残ると感じた、商品について詳しく知りたいと思った、商品が魅力的だと思った等)という、ほとんどすべての項目において「ブランドリフト効果」が向上していることがわかりました。

次に調査したのが「商品理解と意向調査」について。タテ型動画を見た場合、ヨコ型動画を見た場合、動画に接触していない場合の3パターンを比べて、それぞれの「商材機能理解」「利用意向」「購入意向」における数値を調べました。

その結果、こちらの調査でも「タテ型動画に接触した場合」が最もユーザーに対してブランド効果が見られたのです。

そして、最後に紹介するのが「広告想起リフト調査※」です。この調査は、実際に行った複数のキャンペーンのなかで、広告に接触していない場合と比べて、タテ型動画に接触した場合に、どれくらいの広告想起リフト効果が現れたのか数値化させたものになります。

※広告想起リフト・・・広告に接触してから2日以内に広告を想起する可能性が高い人々の推定人数

この表で注目していただきたいのは、赤枠と青枠の数値です。

青枠はユーザーが広告に接触した回数を示すFQ※の数値です。
赤枠は広告に接触していない人と比べて、接触した人がどれくらい広告想起リフトしているかを示す「リフト率」の数値になっています。
※FQ(フリークエンシー)・・・広告接触頻度。一定期間にユーザーが広告に接触した回数のこと。

このデータからわかるのは「何回の広告接触があれば、ユーザーは広告想起を起こしやすくなるのか」ということです。

以上を踏まえてそれぞれの数値を見た場合、広告接触者のほとんどがFQ1〜2回以内に広告想起リフトしていることが読み取れます。

以上3つの調査から「タテ型動画」はブランドリフト効果や広告想起リフトにおいて高い効果を期待できる、という結果が得られました。

最も広告効果に寄与する評価KPIとは。LODEOの調査結果から得られた答え

また、よく企業様から「広告効果を判断するには、どのようなKPIを設定すれば良いのか」というご質問をいただきます。

これまでの動画広告においては、「視聴完了率」と「視聴完了単価」がとても重視されてきました。しかし私たちは、広告想起リフトについて調べる際は、「総視聴時間」を見るべきではないか、考えています。

例えば、15秒の動画広告を視聴完了数(率)で評価する場合、広告効果としてカウントされるのは15秒視聴された場合のみとなります。12秒や14秒見ていた人がいても、カウントされません。

つまり、いくらコストをかけて何万人に動画を配信しても、視聴完了した人以外はすべて「動画の効果は0」という結果になってしまいます。

そこで「視聴完了率」ではなく「広告が印象に残っているか(広告想起リフトしているか)」について調べてみると、動画を最後まで視聴していなくてもユーザーの記憶にも残っているだろう、というのが弊社の考えなのです。

動画広告において着目すべきなのは「広告について印象が残っているかどうか」。最後まで視聴していなくても、15秒の動画を12秒視聴して「広告想起リフト」が起きていれば、広告効果は得られたといえるでしょう。
つまり「視聴完了数」だけで判断してしまうと、ユーザーの記憶に基づく調査とのあいだにギャップが生まれてしまうのです。

だからこそ、広告効果について調査をしたい場合は「総視聴時間」をKPIとして設定することが最適なのではないでしょうか。

「アウトストリーム型×タテ型」の動画クリエイティブの最適解

最後に「アウトストリーム型×タテ型」の動画クリエイティブにおける最適解についてです。
以前、スプリット※を制作した動画を配信し、広告想起リフトやCTR、ブランド認知、好意度、視聴完了率をそれぞれの動画で比較した結果、次のような動画が効果的だとわかりました。

※スプリット・・・複数の広告パターンを作って試行し、その効果を調べること

全体的にスコアが上がったケースには、
・導入部分にフックとなる、インパクトのある要素がある
・近い(アップ)カットが多い
・商品が早めのカットで登場する
・ブランドロゴが常に見える位置にある
という特徴が見られました。

また、うまくいかなかったケースには
・動画の導入でブランドロゴが一定秒数全面表示される
・全体的に遠い
・商品カットが終盤まで登場しない
・美しすぎるイメージ訴求のみの映像
という特徴がありました。

ユーザーが動画を目にした途端、広告だと判断されてしまう「導入部分に挿入するブランドロゴ」や、美しすぎるあまり何を伝えたいのか曖昧でユーザーが離れてしまう「美しすぎるイメージ訴求」など、実践を重ねるうちにユーザーが離れてしまう要因が少しずつ掴めてきました。

弊社では、これまでさまざまな動画クリエイティブを制作し、どのような動画がユーザーに響くのか、このように日々研究を重ねてきました。しかし、まだ「各ブランドにとって最適な動画クリエイティブとは何か」という解を見つけられていないのが現状です。
特にアウトストリーム型は、多くのユーザーにリーチ出来る一方で、ユーザーの属性や環境などはバラバラです。そんな中、単一的なクリエイティブによってすべてのユーザーに効果を出すことは難しいことだと考えています。

しかし、今回の調査で行ったようにモバイル上の動画広告では「複数のクリエイティブを同時にスプリットさせることができる」というメリットがあります。だからこそ複数のクリエイティブを作って、それぞれに合う配信面のベストマッチを見つけていくことが、効果的な動画クリエイティブを導き出すために重要なことなのです。

以上が、弊社のアドネットワークサービス「LODEO」を運営するなかで導き出した「動画広告のポイント」になります。もし、これから動画広告に取り組んでいきたいと考えている企業様がいらっしゃいましたら、ぜひ設計などについてお話しさせていただければと思います。

プレゼンテーションは以上です。ご清聴いただき、ありがとうございました。