“信頼性”こそが、1000億円規模のWeb動画広告マーケットを支えていく――Momentum高頭博志×CA加藤徹

「最近、Web動画広告を目にする機会が多くなった」

インターネットを日常的に利用する方のほとんどが、そう感じていることだろう。スマートフォンやソーシャルメディアの普及により、ユーザーの動画視聴時間は年々増加し続けている。それに伴い、企業がWeb動画広告をマーケティングに活用することは一般的なものとなってきた。

しかし一方で、認知目的のWeb動画広告がネガティブなニュースに表示されるなど、企業のブランド価値の毀損に繋がりかねない広告配信が問題となっている。Web動画広告の影響力が大きくなっている現代では、かつてないほどに「どういった広告を」「どのメディアに」「どう出すか」という方法論が、広告配信企業やマーケッターに求められているのだ。

その方法論のヒントを探るため、今回はアドフラウド(広告詐欺)対策やアドベリフィケーション(※)のサービスを提供するMomentum株式会社で代表取締役を務める高頭博志氏(写真右)と、株式会社サイバーエージェントのアドテクスタジオでスマートフォンに特化した動画アドネットワークLODEOのプロダクト責任者を務める加藤徹氏(写真左)にインタビューを実施。

Web動画広告が普及してきた背景や、ブランド価値の毀損につながる広告配信を防ぐための手法、Web動画広告をより発展させるために必要な取り組みなどについて語ってもらった。

※…適切なメディアに広告が表示されるように、広告配信先のコントロールを行うこと。

スマートフォンの普及により、主流となってきたWeb動画広告

――はじめに質問したいのですが、近年“動画”を活用したWeb広告の数は急激に増えてきました。これはどうしてなのでしょうか?

加藤:その理由は大きく分けて2つあると考えています。1つは、日本でインターネットのインフラ環境が整備されてきたことに加えて、スマートフォンが普及したために多くのユーザーが動画に触れやすくなったこと。

もう1つは、それに伴ってユーザーの可処分時間がスマートフォン上のメディアやプラットフォームに割かれていることです。これまでは多くの企業は、テレビCMを中心としてマーケティング戦略を設計してきましたが、その比重が徐々にスマートフォンに移行しつつあります。

その状況でユーザーに対して効果的に広告を訴求するには、テキストや画像よりもインパクトがある“動画”を活用することが重要になってくるんです。

――具体的に、Web動画広告の市場規模はどれほどのものになってきているのでしょうか?

加藤:サイバーエージェントが運営する、動画広告に特化した研究機関「オンラインビデオ総研」のリサーチによると、2017年度はWeb動画広告流通金額が1000億円を突破する想定です。

――1000億円超ですか! 相当に大きな規模のマーケットですね。

加藤:その内訳のうち、スマートフォンは600億円以上になると試算されています。つまり、もはやPCのWeb動画広告市場を超えようとしているわけです。

――スマートフォンのWeb動画広告が一般的なものになるにつれ、広告のクリエイティブはどのように変化してくると思いますか?

加藤:今はまだ、Web動画広告をテレビCMの延長線上で考えているクライアントが多数なので、テレビCMの素材をそのまま使うケースが多いです。

しかし、今後1~2年くらいでその状況は変わってくるでしょう。スマートフォンに最適化したWeb動画広告が、テレビとは別の生態系として確立されてくると考えています。LODEOは、それに向けた取り組みを進めている最中です。

――スマートフォンに最適化した動画広告として、LODEOは具体的にどのようなサービスを開発しているのでしょうか?

加藤:「タテ型」の動画フォーマットにこだわって広告商品を開発しています。これはなぜかというと、これまで主体であったヨコ型動画では、コンテンツ内に広告が設置された場合にスマートフォン画面の3分の1以下くらいしか表示されないからです。

基本的にユーザーは広告よりもコンテンツの方が優先順位として高いため、どれだけリッチなWeb動画広告を制作しても画面の専有面積が小さければコンテンツをメインで見てしまいます。

ですが、タテ型動画広告の場合はそうではありません。私たちが提供している広告サービスの場合、スマートフォン画面の90%を占有して動画を表示するため、ユーザーに対してかなり大きな訴求力を持っています。

▲画像はLODEOコーポレートサイト(https://www.lodeo.io/)より。

――確かに、この動画サイズならばスマートフォンユーザーに対して圧倒的にインパクトを残せそうです! これが、「スマートフォンに最適化した動画広告」ということなのですね。

「ネガティブな記事に広告が表示される」問題に、どう立ち向かう?

――次に高頭さんに伺いたいのですが、Web広告はテレビや雑誌など他のマスメディアとは異なり「広告掲載先メディアの信ぴょう性が怪しいことがある」「広告掲載先メディアのバリエーションが多種多様である」という特徴を持っています。そのため、広告が表示されるコンテンツの内容によっては、企業にマイナスのイメージがついてしまうケースもあるとお聞きしました。

高頭:その通りです。最近起こった事例を挙げると、イギリスの某Webメディアが人種差別をテーマにした記事を掲載していたのですが、その記事に日本の自動車会社やアメリカのエンターテイメント企業の広告が表示されており、大きな社会問題となりました。この問題は最終的に、英国の議会が調査をするほどに深刻化したそうです。

記事に広告が表示されている場合、読者は「広告主の企業が、記事の内容を“良いもの”と考えている」というふうに捉えます。たとえ、広告主の企業が記事の内容を全く知らなかったとしてもです。だからこそ、ネガティブな内容の記事に広告が表示されてしまえば、企業のブランドは大きく損なわれてしまいます。

――恐ろしい話ですね……。その前提がある中で、広告主はいかにして企業のブランドを守っていくべきなのでしょうか?

高頭:Web広告は配信先メディアの種類が膨大であるため、どのようなメディアに広告が掲載されているかを人間の目で全てチェックするのは不可能です。だからこそ、テクノロジーを活用して「掲載先のメディアが適切なものであるかどうか」を見分ける仕組みが必要であると考えています。

――高頭さんが代表取締役を務めるMomentumでは、その「広告の適切な掲載先かどうかを判別する」ためのサービスを提供されているそうですね。

高頭:はい。これは、アドベリフィケーションと呼ばれるテクノロジーです。具体的には、自然言語処理を広告配信先のメディアや記事に対して実施することで、「どのような内容のコンテンツが掲載されているのか」「この面に広告を表示しても大丈夫かどうか」などを判別しています。

こうした技術を活用することで、適切なメディアやコンテンツへの広告表示を実現しているのです。

安かろう悪かろう“ではない”Web広告を実現するために

――最後になりますが、Web広告をより発展させていくために、広告配信企業はどのような取り組みをしていくべきだと考えていますか?

高頭:「アドフラウドの問題をどう解決するか?」は、重要なテーマの1つだと考えています。これは、表示されている広告を実は人間ではなくロボット(bot)が閲覧していたり、広告の枠が不正に設計されていてユーザーに届かないような形になっていたりする悪質な広告のことです。

当然のことですが、こういった広告を購入しても企業は何のマーケティング効果も得られません。ですが、オープンのオークションなどで広告を買いつけている企業の中には、こういった広告を購入してしまっているところがけっこうあるんです。こういった悪しき事例が起こってしまうと、Web広告は「安かろう悪かろう」というイメージがついてしまい、商品価値も下がってしまいます。

弊社としては、Botによる閲覧などの無価値の広告をテクノロジーによって可視化していくことで、広告主が適切な広告を購入できるような世界を実現したいと思っています。それが実現できれば、Web広告を利用する企業もより増えていくのではないでしょうか。

加藤:高頭さんと近い意見にはなりますが、今後はWeb広告の“信頼性”を高めていくことが重要になってくると考えています。

よくある例として、広告主は「テレビを観ない人が増えたから、Web上でリーチをたくさん取りたい」という“量の担保”を要望として持っていることが多いです。しかし、最終的に広告主が選ぶ掲載先は、信頼性の高い数メディアだけであるケースがほとんど。そうなってしまうと、配信できる広告はごく少数になってしまいますし、リーチもそれほど取れなくなってしまいます。

なぜそういうジレンマが起きるかというと、現状ではWeb広告の安全性やブランド毀損の問題を気にされている広告主が多いからだと思うんです。その課題を解決するには、私たちのような広告配信企業が、付加価値の高い広告枠を安定して提供し続けていく必要があると考えています。そうすることで、Web広告の価値やブランドは高まっていくのではないでしょうか。

――なるほど! Web動画広告業界を支えるお2人だからこそ語れる考察、本当に参考になりました。今回はどうもありがとうございます。