動画広告は、Web研の認知をどれだけ向上できたのか?――「赤裸々にお伝え。動画活用虎の巻実践篇セミナー」

2017年5月10日。
Web広告研究会(※1)の主催により、動画広告に関する知見や事例を共有する場として「赤裸々にお伝え。動画活用虎の巻実践篇セミナー」が開催された。

本イベントは2部構成。第1部のテーマは、Web広告研究会を構成する委員会の1つである動画活用委員会(※2)が作成した「動画広告虎の巻」だ。この虎の巻を活用し、動画広告の「制作」「配信」「分析」の各フェーズにおいてどのような取り組みをしてきたのか、担当者による報告がされた。第2部では、動画広告のTOPランナーによるパネルディスカッションを実施。今回は、そのうち第1部の模様をレポートする。

登壇者は、清家 直裕氏(アサツーディ・ケイ)、内田 朝子氏(NEC)、松原 央達氏(リクルートテクノロジーズ)、中村 俊之氏(コニカミノルタ)の4名だ。動画広告業界をリードする面々は、いかにして虎の巻を活用し、どのような成果を上げたのか。その道程をたどった。

※1…Web広告研究会とは、400社以上の企業が会員となり、Webマーケティングの研究や情報共有を行なっている団体。
※2…Web広告研究会の研究活動は、目的ごとに分けられた委員会を中心に進められている。デジタルコミュニケーション時代における企業広報のあるべき姿を研究する「コーポレートブランド委員会」。モバイルの様々な分野について、内外から講師を立てて勉強会を中心に定例会を開催している「モバイル委員会」。企業のマーケティング活動における動画の活用の活性化を目指す「動画活用委員会」など、数多くの委員会が存在する。

動画広告虎の巻を活用し、「Web広告研究会の会員獲得」を目的とした動画広告を配信

清家 直裕氏(アサツーディ・ケイ)

清家:皆さま、お集まりいただきありがとうございます。私たち動画活用委員会は、動画マーケティングにおける知見と事例をつくること。会員の皆さまへ情報を還元し、動画市場を活性化することなどを目的に活動してきました。

本日は、動画活用委員会の昨年1年間の活動として、「動画広告虎の巻」を活用した事例について報告いたします。少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。

まずは、そもそも「動画広告虎の巻とは何か?」について解説します。これは、2015年度に動画活用委員会が作成したもので、「初めて動画広告に携わる方々を対象に、動画広告の基本項目をまとめたもの」です。動画広告において「何をすれば良いのか」「何に気をつけるべきなのか」「どのような視点から成果検証をするのか」といった点についてアドバイスする内容となっています。

動画活用委員会は、昨年この虎の巻を実際に活用し、1年間をかけて「Web広告研究会の会員獲得」を目的とした動画広告を配信しました。この活動の振り返りとして、動画広告の「制作」「配信」「分析」のそれぞれを担当したワーキンググループの3名の代表者にご報告をしていただきます。

【制作グループ】ヒアリングを通じて、解決すべき課題に応じた明確なKPIを設定する

内田 朝子氏(NEC)

内田:どうぞよろしくお願いします。私からは、「制作」フェーズについてのお話をさせていただきます。

私たちは、動画制作を行う前に広告主であるWeb広告研究会の代表幹事を中心にヒアリングを行い、KPIを設定しました。このヒアリングは、「動画広告虎の巻」にあるヒアリングシートを活用して実施されています。

このシートは、動画広告を行う目的を「素材視点」「施策視点」「効果視点」の3つの項目に着目して点数をつけるものです。その点数の結果を元に、動画広告のKPIを「①ブランディング×認知」「②ブランディング×理解」「③セールス、プロモーション×認知」「④セールス、プロモーション×購入・購買」という4つのパターンに分類します。

今回の例では「ブランディング×理解」というパターンの点数が1番高かったので、その指標をKPIと定めました。

また、このKPIをさらに深掘りし、「①広告主の加入を増やしたい」「②Webに関して課題を持っている若い広告主に積極的に参加してもらいたい」「③新しい会員と、経験は浅いが今後の業界を担うマーケターに参加してもらいたい」という3つを課題解決の方向性として設定しました。

また、Web広告研究会に参加するには会社単位での加入が必要となるため、「決済権限のある上司の層への認知」もサブターゲットとして設定しています。

次は、制作した動画広告の概要について説明します。企業に所属するマーケターがターゲットになるため、配信先のデバイスはPCに設定しました。動画の長さは、Web広告研究会の理解を促進する30秒と、直感的に訴求する15秒の素材を用意しました。

制作費は100万円。制作期間は1ヶ月と短い期間で制作しています。実際の動画の内容に関しては、Web広告研究会に参加いただいている制作会社様にお声掛けをし、コンペを行って決定しました。

最終的には複数パターンの動画が完成し、Web広告研究会が広告主の抱える課題を共有し、情報交換できる場であることを伝えられる内容となりました。


▲実際に制作された動画

【配信グループ】「広告出稿ランキング上位の企業かつ首都圏の25〜34歳のマーケター」という、狭い層をターゲティング

中村 俊之氏(コニカミノルタ)

中村:私の方からは、動画広告の配信フェーズにおいて実施した施策について報告します。先ほどの話にもありましたが、今回はKPIの1つとして「若手マーケターのWeb広告研究会への加入促進」があります。この内容をさらに具体化し、「Web広告研究会のセミナー申し込み100件獲得」を目指すことにしました。

配信の際は、このKPIの設定以外にも「配信方法」「ターゲティング」「フォーマット」「調査方法」「デバイス」などをどうするか、検討しながら進めていくことが重要になります。

今回は、配信方法としてインバナー広告、インストリーム広告を活用しました。また、1番重視したのは「ターゲティング」です。今回は、「広告出稿ランキング上位の企業かつ首都圏の25~34歳のマーケター」という、かなり狭い層をターゲットに設定しています。

よって、限られた予算で、この層にしっかり届く配信を行えるかどうかが、今回の大きなポイントになりました。最終的には20-30代向けの特別セミナーの案内に対して78名が登録されました。

※「考察」の資料上記に変更しています。こちらご使用ください。

この結果について、振り返りましょう。まず、ターゲットの含有率について。先ほども話した通り、今回はかなり狭い層へのアプローチだったため、配信する媒体の選定を慎重に行いました。その結果、B2Bターゲティングでの含有率としては想定より高めの結果を出せています。

しかし、広告の在庫の観点から見るとかなり厳しい結果でした。これだけ媒体を絞って配信をしたので、やはりすぐに在庫切れを起こしてしまいました。これをどう解決するかは、今後の課題です。

また、配信中も効果測定をしながら各媒体の出稿数を調整していました。これにより広告配信期間の後半からはパフォーマンスが大きく上がり、成功につながりました。

私からの振り返り報告は以上となります。クリエイティブについての詳細な分析は、この後に松原さんの方から報告していただきます。

【分析グループ】若者マーケターの態度変容に大きな効果。年代別のコンテンツの方向性が今後の課題

リクルートテクノロジーズの松原氏

松原:私の方からは、「どのような調査観点から分析を行ったのか」について説明します。今回は拡散を意図した広告配信ではないので、主にユーザーの態度変容にフォーカスを当てて調査と分析を行いました。調査は大きく分けて2つ実施しています。

1つ目は、態度変容を測るためのブランドリフト調査です。調査方法としては、動画が接触したグループと非接触グループの2つに分け、それぞれにアンケートを実施しました。その2つの結果の差分によって、「認知度」「セミナーの参加意向の向上」があったかどうかを測っています。

まず今回の調査において、動画広告がどのような層に接触していたかを解説します。年代に関しては広告接触のうち約80%がターゲットとなる20〜30代の方でした。しかし、業種別で見るとターゲットとしていたマーケターの接触は、全体の20%程度に留まってしまいました。

次に、態度変容の結果について解説します。Web広告研究会の認知は14ポイントの上昇、セミナーの参加意向は8ポイントの上昇がみられました。これはなかなか良い結果だと思っています。20〜30代に限定してこの分析を行うと、全体よりもさらにポイントの上昇がみられました。つまり、よりターゲットに刺さった動画広告だったのではないかと思っています。

2つ目の調査は、配信した2つの動画広告(動画A、動画B)を比較したアンケートです。アンケートの回答は、Web広告研究会の会員様にご協力いただきました。また、アンケートには自由記述の項目を設けており、その回答にテキストマイニングをかけて結果を考察しました。

まず、動画Aと動画Bを比較した結果について説明します。動画Aは、「(動画の内容が)わかりやすい」(41.2%)、「(セミナーに)参加したい」(28.4%)と、少し低い結果になってしまいました。一方で動画Bは、「(動画の内容が)わかりやすい」(75.2%)、「(セミナーに)参加したい」(48.3%)と、動画Aと比べて高い結果が得られました。

次に、テキストマイニングの結果についてご説明します。まず、アンケート全体を通して「わからない」という否定的な単語の出現が多かったです。ただ、一方で「わかりやすい」「もっと知りたい」という意見も多く、ここは評価が大きく分かれました。

また、アンケート協力者のなかから広告主様だけにフォーカスして分析すると「わかりやすい」という意見が多かったため、ターゲットとしていた業種の方からはご好評いただけたと思います。

一方、若手だけにフォーカスを当てて分析してみると、面白い結果がでました。20代は「わからない」という意見が多かったのですが、「調べたい」「知りたい」という意見も多かったのです。これは、わからないことが逆に学習意欲を換気し、セミナーの参加につながったのではないかと……少しポジティブに解釈しています(笑)

30代は「わかりやすい」という意見も多かったのですが、「役に立つ情報があるなら(セミナーに参加したい)」「情報交換できるなら(セミナーに参加したい)」という、イベントの内容を意識した意見が多かったです。このことから、セミナーの参加を促すためにはより具体的なメリットの提示が必要だと考えます。

分析全体をまとめると、特に若者の態度変容を促すことができ、狙った効果を得ることができました。また、広告のクリエイティブに関しては年代別のコンテンツの方向性をもっと工夫する余地があり、それは今後の課題と言えそうです。以上になります。本日はありがとうございました。

イベントを振り返って

他社の広告業務の戦略立案から制作〜配信〜広告評価までの全ての流れを覗く機会は滅多に無いので、関係者としても純粋に「勉強になった」機会でした。良い点も、改善点も、自社の宣伝業務に反映させることができる良い機会になったのでは、と思います。

なお、気になる「動画虎の巻」ですが、WEB研の会員社は無償で貰うことができるようです。問い合わせ先はWeb広告研究会事務局(office@wab.ne.jp)にて。

株式会社サイバーエージェントオンラインビデオ総研 所長 酒井英典