“人”と“共感”を軸にしたマーケティングこそが、若年層の心を動かす――WAVEST松村淳平×CA Young Lab須田瞬海

これまでのマーケティングは、テレビや雑誌といった「メディア」を主体としたものが主流であった。この手法では、「どの媒体で」発信するかが最重要であり、それと比較すると「誰が」登場するかの重要度は低い。

だが近年、スマホやSNSの普及により誰もが情報発信力を持ったことで、インフルエンサーを活用した「人」主軸のマーケティングが流行し始めている。つまり、「どの媒体で」発信するかではなく「誰が」発信するのかがより重要になってきているのだ。

この潮流によって、企業のマーケティングはどのように変化してくるのか。現状と今後の展望を、インスタグラマーを使ったマーケティング支援を行う株式会社WAVEST代表取締役を務める松村淳平氏と、若年層に特化したデジタルマーケティング事業を行う株式会社CA Young Lab代表取締役の須田瞬海氏に聞いた。

今こそオールジャンルの企業が活用すべき、Instagram動画の可能性

--本日はよろしくお願いいたします!まずは、株式会社WAVESTの事業内容について、松村さんに伺ってもよろしいでしょうか。

松村:弊社は、インスタグラマーを活用したマーケティング支援事業をしている会社です。ユーザーから人気のあるインスタグラマーを活用し、企業の新商品やイベントのPRを行っています。

--所属するインスタグラマーの方は、どのような方が多いのですか?

松村:8~9割が20~30代の女性で、今では2,300名くらい所属していています。この数はおそらく国内で1番なのではないですかね。

Instagramを活用したマーケティングの歴史はまだまだ若いですが、うちは2015年1月からこの事業をやっているので、老舗の部類に入ると思います。

--だいぶ早い時期に事業をスタートされていますよね。当時はInstagramを使ったマーケティングが主流ではなかったと思うのですが、なぜインスタグラマーを起用した事業を始めたのですか。

松村:僕自身、Twitterのフォロワーが4万人くらいいて「この繋がりって、何かに役立てられないのかな」と思っていたときに、ちょうどYouTuberの波が来ていたんですよね。ただ、YouTuberにフォーカスした企業がたくさん出てきている中で、同じことをしても勝てない。だから次に波がくるところに挑戦しようと思って、Instagramに注目したんです。

雑誌では、お気に入りの人がいても「この人が出ているページだけをチェックしよう!」みたいなことって出来ませんよね。でもInstagramは、それが出来る。このように、これまでにない機能を持ったInstagramにプラットフォームとしての可能性を感じて、いずれ流行るだろうなと考えました。

--将来性に着目したのですね!事業を立ち上げたときと比べて、InstagramでPRしたいと考える企業は増えていますか。

松村:当時はInstagramを知らない企業さんもいたくらい知名度がなかったのですが、今はかなり注目されるようになってきましたね。今までにお仕事させていただいた案件数は2,000を超えました。当社がディレクションしたものが、こんなにたくさん世に出ているのかと思うとびっくりです。

最近は、動画の案件も増えてきているんですよ。

--動画ですか。Instagramの動画PRと相性の良い企業やジャンルはあるのでしょうか。

松村:美容や料理など、商品そのものではなく、使用している“過程”が重要なものは相性が良いですね。ただ、Instagramの動画PRは、ジャンルや業種に関係なく活用できると思っています。

例えば自動車の広告の場合、インスタグラマーがただ車に乗っている静止画よりも、実際にドライブを楽しんでいる動画のほうがプロモーションの幅が広がりますよね。このように、動画は画像では伝えきれなかった情報を伝えることができるので、あらゆる業種にとって重要なPR手段になっていくと思います。

--今後Instagramの動画広告の可能性は、どう広がっていくと思われますか?

松村:今後は、「ストーリー(Stories)※1」の活用も増えていくと考えています。

インスタグラマーさんは、自分の投稿画像に統一感を持たせて、“フォトカタログ”のように使っている方が多いんです。なので、インスタグラマーさんにPRをお願いすると、広告によって投稿の統一感を崩してしまうことを嫌がっていた方もいらっしゃいました。

でも、ストーリーなら24時間で投稿が消えるので、“フォトカタログ”への影響が少ない。それによって、インスタグラマーが感じる広告ハードルはだいぶ下がったと思います。短時間限定の配信になるので、安い価格で広告が出せるというのもストーリーのメリットじゃないでしょうか。

ストーリーは、今までのInstagramにはないプロモーションの活用手段として台頭してくると思います。

※1ストーリー(Stories)…Instagramの機能。通常のタイムラインとは別の枠で、写真や動画の投稿・共有、ライブ配信ができる。投稿は24時間で消える仕様になっている。

--Instagramでマーケティングを行う株式会社WAVESTにとって、今後目指していきたいことや、そのために必要なことを教えてください!

松村:YouTuberほどの人気があるインスタグラマーがまだいないので、Instagramでのスターを生み出したいと思っています。

YouTuberに何故あそこまでの支持が集まるのかというと、毎日自分に話しかけてくれて、毎日面白いことをしてくれるからだと思うんです。日を重ねるごとに身近に感じるようになって、ファンになるという流れがある。写真を眺めているだけでは、心の底から相手を好きになることって難しいんですよね。

だからこそ、今後は動画がキーになると思っています。まだInstagramでは静止画が主流ですが、動画を活用することで人間味が出てきて、「この人の性格や口調が好きだな」「この人に共感できる」などと、“コアなファン”がつくインスタグラマーが増えてくると考えています。

ユーザーの“共感”を喚起させるマーケティングの重要性

--続いては、株式会社CA Young Labの代表である須田さんにお伺いします!具体的に御社では、どのような事業に取り組んでいるのでしょうか。

須田:2016年の10月に設立した株式会社CA Young Lab では、若年層に向けたマーケティングを中心とした事業を行っています。

具体的には、SNSで若年層に影響のあるインフルエンサーをサポートすることで、ファンを増やすお手伝いをしたり、そのインフルエンサーの子たちと企業をマッチングして、PRに起用させていただいたりしていますね。

インフルエンサーの投稿のエンゲージメント率※2を分析することで、最近の若年層がどういったことに関心があるのかということも深堀りしているんですよ。

※2エンゲージメント率…1回の投稿につき、ユーザーがどれくらい積極的な反応を示したのか表す割合。

--若年層をターゲットにした場合、インフルエンサーを使ったマーケティングが、マスメディアでのマーケティングより優れているのはどんなところですか。

須田:ユーザーが、インフルエンサーに「共感」できる点だと思います。
今の若い子たちって、気付いたときからスマートフォンを持っていて、Googleが常にそばにあった環境で育っています。だから僕らたちが想像する以上に情報リテラシーを備えていて、「どれが広告なのか」って見分ける判断力がとても高い。

例えばCMを見ていて、某有名女優を起用し、一方的に情報ををPRしていたとしても、自分ゴト化できずに、ただの情報として受け取ってしまうケースが多い。

だからこそ、SNSでフォローしている親しみのある子のほうが「共感」を得られすいのではないかな、と考えています。情報として「そうなんだ」で終わってしまうのではなく「そうだよね」という共感として落とし込めないと、今の子たちには届かないのではないでしょうか。

--ユーザーの「共感」が大切ということですね。実際にインフルエンサーを使ったマーケティングを行ってきた中でそれに当てはまる具体的な事例があったら教えていただきたいです!

須田:先日、フォロワーが1万人くらいの中学生の子に、新しいアプリのPRをしてもらったとき、その日のダウンロード数だけ1500くらい伸びたんです。その子のキャラクターを活かしたPRを行ったので、コアなファンへ確実に届いた結果ではないでしょうか。

ユーザーにとって、ただフォローしているだけの存在ではなく、日頃からタイムラインでチェックをするほど好きなインフルエンサーだったというのも、ポイントですね。Twitterは投稿のエンゲージメント率も確認できるので、「フォロワーがどれだけ投稿を見たり反応したりしているか」というフォロワーの“濃さ”を見ていくことが、SNSを活用したマーケティングを行う上で重要な要素になると思います。

--若年層に対するマーケティングに苦戦している企業は多いかと思います。若年層へリーチを届けるためには、どのような施策をしていけばいいのでしょうか。

須田:まずは、若者の文化を理解することが大切なのではないでしょうか。今、若い子たちの間では、「踊ってみた」系の動画や「リップシンク」と呼ばれる音に合わせて振付けを加えた動画を投稿するのが流行っています。

それ以外にもブルゾンちえみさんの真似をした動画や、ソフトバンクさんの「学割ってるダンス」・直近では「カサネテク」などが拡散されていることからも分かるように、模倣しやすいコンテンツがあり、それをインフルエンサーが真似をし、インフルエンサーの発信力で拡散されていくケースが多い。原作者よりも模倣者の影響力が勝っているケースが多い点が非常に特徴的ですね。

若者に人気のインフルエンサーの動向をよく観察すると、そうした流行が分かるので、そこをちゃんと見て理解する。若者に対するマーケティングをするときには、どこに(誰に)拡散の火種があるのか?を捉えることが重要です。

若年層へのマーケティングにおいて、着目すべきは「動画」と「人」

--最後になりますが、若年層に向けた動画マーケティングについて、企業に何かアドバイスがあれば教えて下さい!

松村:今、Instagramマーケティングにおいて動画を活用している企業は少数派です。まだ必要性をそこまで感じていないのでしょう。

現在は静止画の投稿が多いですが、いずれは静止画に見飽きる人も出てくるはず。動画が主流になるときが来ます。そのタイミングで動画を始めたのでは、他の企業との差別化は図ることができませんよね。

今このタイミングで動画マーケティングに着手することで、先駆けの存在となるべきだと思います。

須田:これまでWeb用の動画広告を作る際は、テレビなどのマスメディアにも流すCMに少し手を加えたものが主流でした。

しかし、今後は流すメディアを変えるだけでなく、“起用する人”も変えるべきだと考えています。例えばTwitterで広告を出すなら、Twitterで人気のインフルエンサーを起用する、というように、それぞれのプラットフォームに適した人を選ぶ。そうすることで、企業から出す広告だけでなく、インフルエンサー本人の投稿からファンへと広まり、2次・3次……とどんどん拡散されていく、という副次的な効果も期待できます。

“届けたい人にできるだけ近い存在の子”を起用することは、若年層のマーケティングにおいてとても有効的だと考えています。

まさに“人”を軸としたマーケティングが、若年層へのアプローチとして重要な手法を担うのではないでしょうか。